今まで僕は、日本経済が停滞すると円は安くなり、円が安くなると輸出産業が潤うというアンカーが存在すると思っていた。
しかし、日本経済が停滞すると円が高くなる状況になるとどうなるだろうか?
普通に考えると円が高くなるとそのお金で海外資産が安く買える。円を発行すれば世界が買えるわけだからこれが続くはずがない。
リフレ派は日銀に国債を買い取らせて円を安くすべきだと考えている。
モノと金をそれぞれ整理してみる。
□モノの流れ
1.円が高くなると輸出産業は利益を減らし、非効率な国内工場を閉鎖し海外へ移転する。もちろん海外の収益は再び海外に投資する。円は売られ、ドルが買われる。日本企業は真の日本外企業へと変化する。
2.円が高くなるのだから内需産業は海外からモノを仕入れて、国内で売る。儲けた収益は再び海外から購入する資金に当てられる。円は売られ、ドルが買われる。
3.国はなにもしなければ、国内の資金を回収しそれを再配分する。円やドルには関係がない。
□金の流れ
4.ドルベースでの内需産業の需要は増えるので、内需産業への投資が進み、ドルが売られ円が買われる。
5.円が高くなり収益が減るので、輸出産業にもお金は入らない。
6.日本の資本は海外へ向かい稼ぐために円を売りドルを買う。
7.円で借り海外で運用する。円が売られ、ドルを買う。
8.政府が、円を売りドルを買う介入を行う。
ここで、以前はそれぞれがどのような動きをしていたのか考えてみる。
とくに円安の原動力になっていたのは、6と7だ。また、2005年から2008年にかけては1と5(逆)も進んだ。
つぎにこれからそれぞれがどのような動きをするのか考えてみる。
以前と今とで大きく変わっているのは人口動態と世界の産業構造と日本の国債である。
人口動態とは一言で言えば少子高齢化&人口減少だ。
とくにお金の視点から考えると今まで保険や貯蓄と言う形で資本を海外に向け円安を進めた(6)行動が減る可能性がある。日本の金融資産1500兆円のうち50代以上の持つ資産は80%くらいだ。特に団塊世代は人も多い。その世代が今から労働市場から引退する。
また、人口減少から国内需要は確実に減る。つまり、輸入産業の為替への影響(2と4)は小さくなる。投資は減る可能性も高い。
次に世界の産業構造は、ここ最近でも海外に工場を移転させる動きは加速した。これからはアジアへ投資はますます進み、アメリカの製造業が日本の製造業にシェアを奪われたように日本もシェアを奪われるだろう。また円が高いのならばますます1の動きは加速する。国内の産業は有限であることからも1の動きは単調減少する。つまりだんだん海外への移転も絶対的に少なくなる。
7も怪しい。以前は日本市場は信頼も高く低金利なので円で長期の運用をするリスクも低かったが、日本国債の格付けが下がるようなことになれば、別に日本でなくてもキャリートレードできる場所はあるだろう。
最後に日本の国債について。日本国債を日銀に引き受けさせるという案はアメリカが今積極的にしている。政府起債やMBSをむちゃくちゃ買っている。日本も出来るのだろうか?出来るだろう。ただ永遠にはできない。日本は人口が減少し成長率が落ち込んでいる以上国債の購入をずっと続けることはできない。これは断言できる。ただどこまでかが分からない。今も地方も合わせるとGDP費200%くらいの債務だ。おそらく十年前にGDP費200%まで債務を増やすというとみなそれはもう円の信頼性が落ち込み、国債の価格は下落するよと言っていたと思う。ただ実際今200%を超え、歳入は20年前のままなのに社会保障で生きる人は3倍(かなり適当)くらいになっているだろう。実際社会保証費は30兆円で歳入は40兆円を切る。年率3%で社会保証費が上昇するならあと4年もあれば歳入と同じくらいになる。
このへんはとりあえずおいて、8に関してだがドルを買っているポジションが増えていることを意味している。いつかは均衡になるのなら円を買うことになる。ここも以前より介入する量が減るもしくは逆向きの動きになる可能性もある。
今まで円安の動きになっていた、1,2,6,7,8。円高の動きになっていた、4,5は、それぞれ円安の影響が1,2。円高の影響が4,5となり、6,7,8は円高への影響にもなりえるファクターになっていると言える。時間が立てばたつほど、強く円高に振れさせるファクターは、6と8だ。また影響が小さくなるのは、1,4,5だ。
うまく説明できてない部分もあるが、日本はこれから10年で円高不況が進むと直感的に思った。すぐに円安にならないとビビるのが2年後。円高不況を認識するのが4年後というような気がする。